はじめに

 スターティングブロックは使用時の安定性が求められるので、大きく、重く設計され、練習で用いるようなものでも5kg以上のものが市販されています。レールが長くてかさばり、さらに重量があるものを個人での練習時に練習場まで持っていくのは大変です。

 一方、レール除いた軽量のスターティングブロックが市販されていますが、不安定で足を設置する際に倒れてしまう等の問題があります

 

 「ブロック前方2か所に地面固定ピンを配置する構造」と「スターティングブロックと連結板を棒2本で連結する構造」とすることで、軽量にもかかわらず安定したスターティングブロックを実現。さらに、左右のスターティングブロック同士を裏面同士で合わせてたためる構造とし、収納・持ち運びが非常に楽なスターティングブロックを実現しました。

 この製作方法を紹介します。

 

使用動画はこちら

https://www.facebook.com/100012255631360/videos/269078703510649/

 


 

1 材料表

  材料は、主に木材とアルミです。それ以外の小物を含め日曜大工店(一部は100円ショップ)で購入できます。

2 台板の製作

(1)構造、寸法図

  代表で右足用の台板の、構造、寸法図を示します。左足用は左右対称の構造、寸法になります。

 

注:2項から4項の構造、寸法図で用いている写真は、完成した製作品を用いましたので、すでにシルバーでペイントした写真となっています。

(2)製作方法例

 ア 材料①のアルミ板を図のとおり、切り出し、加工を行います。

   同じ寸法の部品は重ねて、加工すると、早く作業が進みます。

 イ 材料④の角材の溝部の加工を行います。

 ウ ①と④をボンドでつけ(①④アッシー)、木ねじでの固定、穴あけ等を行います。

 エ ⑧のベニヤ板に①④アッシー、⑪のベニヤを取り付けます。

 オ その他、図の通りに、加工をしていきます。

 

 注:⑭の長さ35の固定ピンは、角材の穴に挿入・接着します。

   ⑬は可動させるので接着しません。

 

3 蹴り板の製作

(1)構造、寸法図

 蹴り板は、右用も左用も同じです。構造、寸法図を以下に示します。

(2)製作

 ア ②のアルミを図の通り加工します。

 イ ⑤の角材を②に接着し(②⑤アッシー)、図の通り加工を進めます。

 ウ ②⑤アッシーを⑨のベニヤにつけ、残りの加工を行います。

 

4 支持板

(1)構造、寸法図および製作方法例

 支持板も左右の違いはありません。図の通りに加工します。

 

5 片側組立

 組立前にシルバーのラッカーペイントを塗ります。

 代表で右側組立構造を示します。図の通りに台板、蹴り板、支持板を組み付けていきます。蹴り板には、スポンジ板、ゴム板を両面テープで取り付けます。

 

 

6 連結板の製作

 連結版の構造、寸法図を下に示します。⑩のベニヤに⑥の角材を接着、φ6.5の穴をあけていきます。その後、シルバーのペイントを塗ります。

 ㉓で連結棒を製作、ひもで連結板につなぎます。 

 

7 全体組立

  全体組立状態を下に示します。

  左前、右前により、接続に使用するピンが異なります。

 

 角度は、支持溝までの寸法90mm、110mm,130mm,150mmにあわせて4段階で変わります。角度をもう少し立てたい場合は、支持溝寸法を変更して、たとえば80mm、100mm,120mm,140mmとすれば4段階のいずれも角度が立ってきます。なお、支持溝寸法は80mmより小さくすると部品どおしが干渉します。

 

 収納する際は、片側ずつ折りたたんだ後、裏面どうしを180度ずらして合わせます。こうするとそれぞれのピンが相手側の裏面の穴に隠れます。

 連結板と合わせてA4サイズの袋に入れ持ち運びます。

 

8 注意事項

(1)製作のまえに、各構成品の構造を十分理解し、組み立て時の構成品間の接続状態をイメージできるようにしてください。

(2)日曜大工での製作では、寸法の加工精度は腕によります。組み付かない場合等々ありますので、現物合わせで修正等をしてください。木材の穴埋め、再穴あけ等には、木材用エポキシパテが有効です。

(3)著者は製作してから10年間使用してます。その間、ゴムがへたるとか、⑰のピンが摩耗するとか、取扱いで木の角が欠ける等の事象が生じてきます。適宜補修しながら使ってください。

(4)相当のパワーの持ち主が使用し、「損傷した」等の場合、適宜、補強材を入れる、材料をアルミからスチール(ステン)に変える等、工夫のしどころと思います。いろいろチャレンジしてみてください。

(5)㉑のスポンジ板は、今回初めて使ってみましたので、使用実績が十分ではありません(今までは㉑のスポンジ板使用せず、直接3mmのゴムを貼り付けてました。この場合、スパイクのピンの跡がベニヤについてベニヤ表面がぼこぼこしてました。)。 スポンジの耐久性等の問題あれば、「㉑のスポンジを外して使う」、「⑳のゴムを厚いものに変更する」等、工夫してください。

(6)通常のスターティングブロックと同様、取扱い等でけがをしない、または、させないよう、注意してください。

 

おわりに

 スターティングブロックをリュックにいれ、指ストップウォッチをポケットに入れ、競技場にジョギングで行けるので、短距離練習等がより気軽に効率的に行えるものと期待します。

 機械工学に興味のある、陸上選手を応援します。