はじめに

 指ストップウォッチは活用したいが、「自作せよとなると、狭い場所に3次元はんだする等、細かすぎて大変!何とかして!」との声が多いため、マスターズの選手で、①電子工作もこれからトライしてみようか・・・、または、②子供にでもトライさせてみようか・・・、という人向けに、走りに集中できる装着形態で、手を握る動作をするだけで機能し、製作が割と容易な「手のひらストップウォッチ」の製作方法を紹介します。

 「マイコンプログラムの勉強はいやだ」という人は、PICマイコンのプログラミングのみ電気関係の知人に頼めば、特に電気の知識は不要となり、はんだ付け作業さえ覚えれば製作できます。(電気系の学生ならPICマイコンの扱いがわかる人が大勢いると思います。)

 「電気に強い陸上選手育成の機会」ととらえてチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

 使用動画はこちら

 https://www.facebook.com/100012255631360/videos/263771794041340/

 

 回路図、プログラムは指ストップとまったく同じです。指ストップウォッチの記事を参考にしてください。

注:部品については、PICマイコンが今回DIP型で足のピッチが2.45mmと広くなってます。

  

1  表示部の製作

 100円ショップCanDoのストップウォッチを使いました。ストップウォッチの購入先が異なると、基板の配線が変わります。

 

注1:2016年12月現在、ダイソーでは、小型タイプのストップウォッチは販売してません。 

注2:他に百円ショップシルクのストップウォッチを試してみました。Start/Stop、Mode、V+、V-の位置に配線すれば、正常に作動します。

 

 ストップウォッチの裏のねじを外して、分解します。液晶、導電ゴム、基板、ねじを外し、本体はハンディ鋸等で切り出し、やすりで写真のとおりに整えます。 

 もともとついていたクリスタルはかさばるので、取り外し、表面実装のクリスタルに付け替えます。

 V-とModeの配線は、表面の緑色のコーティングをカッターで削り、はんだをよくなじませてから、配線をはんだ付けします。

 注:ハンダ付けに苦戦するような場合、6(3)項の方法も試してみてください。

 

配線後は、枠に液晶、導電ゴム、基板の順で組み付け、ねじで固定します。

 注:組み付けにくいからといって導電ゴムを接着剤を使って組み付けてはいけません。

 

2 電子部品のはんだ付け

 基板をハンディ鋸で、写真の大きさに切りだします。切った部分はやすりで整えてください。

 回路図のとおり部品を取り付け、はんだ付けしていきます。下の写真を参考にしてください。

注:PIC12F675マイコンは、必ずプログラムを書き込んでから、取り付けてください。 プログラミングの方法は、指ストップウォッチのプログラミングと同じです。もちろんフラットマイコンをDIP型に変換する器具は不要です。また、ブレッドボードでの作動確認をお勧めします。 

 

 右図が裏面です。

 ベルトに装着する際、ベルトに引っかからずに移動できるよう、裏面の配線を極力短く切り、バリや角をなくすようダイヤモンドやすり等でやすりがけします。

 

3 カバーの製作

 まず、ベルト幅調整板を基板で作ります。

 

 スイッチ部のカバーは、ベルト幅調整板の上に鉛筆を両面テープで固定し、その上から熱収縮チューブをかぶせ、ライター等で熱をかけ、型を取ります。

 

 

 電池部、制御部、表示部について、すべてベルト幅調整板を使用して、カバーを作っていきます。

 なお、表示部のカバーを作成する際、熱収縮チューブがきつくて入りにくいので、剪定ばさみ等をチューブ内に入れて、ハサミを開く等してチューブを伸ばします。また、表示部は、熱収縮チューブを取り付け後、本体を気づつけないように注意しながら、窓の部分をカッターで丁寧に切り取ります。

 

4 組立 

 ベルトを加工します。ゴムを挿入したり、手になじむように幅形状を調整したりします。自分の手に合わせて試行錯誤してください。

 

 ベルトに、表示部、制御部、電池部、スイッチをスライドさせながら、装着すれば完成です。

 完成状態と、使用風景です。

 

5 部品表

 

(2)補足

 抵抗、コンデンサの拡大図と値、基板の切り出し用の線、待ち針を電池押えの形状にした写真を以下に示します。

(3)補足2

表示部の緑のコーティングを削ってはんだ付けが難しいとの声を反映して、少しは簡単と思われる方法を紹介します。

 黒の線は電池部の広い面にはんだ付けします。この部分はカバーに干渉する部分なので、なるべく端にはんだ付します。また、カバーのはんだと干渉する部分を削ります。

 緑の配線の方は基板の線が太い部分のコーティング削ってはんだ付けします。コーティングを削らなければなりませんが、太い分作業がしやすいです。

 カバーをする際、黒と緑の線はカバーの外側をはわせます。

 

 クリスタルについては、もともとついてたものを使用する方法例です。一度ははんだを外して、カバーを付けたときにうまく隠れるように、また、線がショートしないように気を付けて再度はんだ付けます。表面実装のものと難易度はそんなに変わらないかもしれませんので、こちらは参考としてください。

 

 

(4)その他

 電子工作をするときに通常使う工具類を参考1に示します。これから電子工作を始めようと考えている人は、参考にしてください。

 今回の製作でスペシャルに使用した工具を参考2に、また、100円ショップでの購入品の一例を参考3に示します。

 

 7 改良情報

(1)R2抵抗値(2017年5月)  

 100円ショップのストップウォッチとの相性(ばらつき)で、抵抗R2=100kΩでは作動電圧が足らずストップウォッチストップウォッチモードに切り替わらない場合がありました。 R2=68kΩにした場合ストップウォッチのばらつきをカバーして作動する様です。

 R2=68kΩで製作することをお勧めします。または、同様のケース(ストップウォッチモードに切り替わらない場合)が発生した場合の故障探究の一つとしてください(注:もちろん、配線がきちんとされていることことの確認が第一です)。

 

おわりに

 手のひらストップウォッチを紹介しました。ベルトの周囲の、表示部、制御部、電池部、スイッチの配置は自由にできますので、スイッチ部を親指の近くに持ってきて、親指作動型にもできると思います。

 いろいろ工夫してみてください。

 電気に強い陸上選手を応援します。